屋外でメダカを飼育する際には水槽に水草を入れるのが一般的。
水草も赤玉土などの底床も入れないベアタンクの環境で飼育することも可能ですが、より楽しく安定した環境で飼育をするために水草が役立ちます。
この水草、飼育環境の美観を整えるだけではなく、メダカ飼育にとっていろいろなメリットがあります。
ビオトープ水草を入れるメリット
最も大きなメリットは水質の浄化に役立つこと
水草は水質浄化サイクルの最終段階に欠かせない
水草はメダカの糞などで汚れた飼育水を浄化する役割として欠かせない存在です。
分などから発生した有害なアンモニアは、ろ過バクテリアによる分解を経て硝酸塩となりますが、これには多少の毒性が残っています。これは水換えによって減らすことが出来ますが、水草を入れておけば硝酸塩を肥料として吸収してくれます。
水換え不要な環境すら実現できる
野外のメダカビオトープなら、日光を受けて水草の成長が旺盛になるため浄化能力もアップ。水草を入れることで水換え不要な環境も実現できます。
ビオトープの水草がもたらす6つの役割
メダカビオトープに水草を入れると、こんなポジティブな効果が期待できます。
見た目を楽しむための観賞用という以外にも、実はいろいろな役割があるのです。
水を浄化して環境を整える
メダカの糞は有毒なアンモニアになる
水草はそのままアンモニアを吸収できない
メダカが食べたエサは糞として排出されます。その糞を微生物が分解することでアンモニアが発生します。糞ではなくメダカのエラからもアンモニアが排出されています。
アンモニアはメダカにとって有毒な物質。エサの食べ残しや枯れた水草も同様にアンモニアの発生源。そのまま水中にアンモニアが蓄積されていくと水が汚れてメダカの死因となります。
水中のバクテリアがアンモニアを肥料に変える
バクテリアの働き
水草はそのままアンモニアを吸収できません。
水中に生息するバクテリアがアンモニアを亜硝酸塩という物質に変えたのち、また別のバクテリアによって硝酸塩に変えることでようやく水草が吸収できるようになります。
アンモニアと比べれば低いとはいえ硝酸塩にも多少の毒性が残ります。しかしこれを肥料として水草が吸収することで水の浄化サイクルが成立します。
ビオトープの浄化サイクル
これまでの説明を図にまとめます。
水草があれば水換えの頻度を減らせる
水草が硝酸塩を肥料として吸収する
水草が無い場合、定期的に水換えをすることで硝酸塩を減らす必要があります。しかし水草があればその頻度を減らすことができる。
さらに水草の生長が旺盛な屋外であれば、肥料として硝酸塩の消費も多くなります。その結果、水換え不要な浄化サイクルを成立させることができます。
観賞用としてビオトープに彩りを添える
ビオトープは日本の四季を反映する鏡のようなもの。
ビオトープは日本の四季を映し出す鏡
季節ごとに表情を変える水草
寒さに震える冬はビオトープ内のほとんどの水草が枯れるか休眠状態になり寂しい見た目になります。やがて春になると休眠状態の水草が目を覚まし鮮やかな緑色の新芽を出し始めます。
高い気温と豊富な日差しをうけて生長が旺盛な夏は植物の強い生命力に元気を分けてもらえます。日に日に気温が下がっていく秋は葉を減らすなど冬支度を始める水草に冬の気配を感じます。
花を楽しむ
暖かい時期は花が楽しめる
水草の中には花を咲かせるものも多く、特に夏場は多くの水草にとって開花の最盛期となります。睡蓮の花が楽しめるのもビオトープならでは。
花が咲かずとも水草には見た目がユニークなものが多いので、いろいろな楽しみ方ができます。
実際のところ市販の水草はほとんが外来種。だから日本の四季や風情に当てはめるのもちょっと違うんですが、やはり季節ごとに形が変わる水草は見ていて面白いです。
光合成をして酸素を供給する
当たり前ですが、水草は植物なので光合成をして酸素を排出します。
水草が酸素を供給する
天気の良い日に気泡を確認しよう
たとえばマツモやウォーターバコパの水中葉など葉が完全に水中にあるタイプの水草であれば、それをとても分かりやすい形で確認することができます。
天気のいい日に水中の水草を見ると、小さな酸素の気泡をプツプツプツと葉から出している様子が観察できるはず。
一方でメダカは生物なので酸素を必要とします。その酸素は水面から水中に溶け込むと同時に、水草からも供給されるわけです。
水草に頼らず水面からの酸素供給を基本に
夜の水草は酸素を消費してしまう
とはいえ水草を入れておけば酸素について万全かというと、あまり過剰な期待をしない方がいいと思います。日光の当たらなくなった夜はむしろ水草が水中の酸素を消費しますし、浮草が水面を覆いつくすと水面から取り込める酸素量も減ります。沢山入れとけばいいというものではありません。
水草による酸素供給はあくまで副産物的なもの、おまけと考えておいた方がいいでしょう。ビオトープであれば水面からの自然な酸素取り込みを主体とし、それで足りないようならエアレーションを検討すべき。
日陰を作って水温上昇を抑える
メダカは高水温に強いけど
40度のお湯にも耐えられなくはない
メダカはかなり高水温に強い魚で、40度近いお風呂のような水温でもなんとか生き抜いていくことができます。
40度近く?嘘やろ?と思うかもしれませんが、実際に遮光をおろそかにしてやらかしてしまったことがあります。一緒に飼ってるエビは大半が死んで茹でエビのように赤くなっていましたが、メダカは水面近くをパクパクして苦しそうなものの生存しました。
真夏は注意が必要
しかし高温がメダカにダメージを与えるのは確実。
真夏は水温の上昇を防いでやる必要があります。小さなビオトープだとなおさら水温が上がりやすく、昼間はなんらかの形で直射日光を遮らなければ一気に全滅するおそれもあります。
水草が日陰を作って水温上昇を抑える
浮草が日光をさえぎる
園芸用の遮光ネットを使ったり、すだれをつかったりして皆さんいろいろと工夫をされますが、水面に茂った水草にも日光を遮る効果が期待できます。
最も効果が高い水草は、水面に浮いて増殖することで直射日光を遮るタイプの浮草。ホテイアオイやアマゾンフロッグビットなどが人気です。これらは夏場の日光と高水温でみるみる繁殖してあっという間に水面を覆ってしまい、増え過ぎて捨てる手間が大変なほどに。冗談抜きで数日放っておけば2倍になってたりします。
すだれなどの併用をオススメ
水槽の設置場所によっては水草だけに遮光を任せるのは不安があるので、直射日光が一日中あたり続けるような場合はすだれなどと併用するのが安心です。
メダカの産卵床になる
関西地方平野部の気温だと早ければ3月ぐらい、遅くとも5月頃にはメダカが産卵を始めます。
水草に卵を産み付ける
水草の根についた卵
お腹にたくさんの卵をぶら下げたメスのメダカは、水槽内の水草などに卵を擦り付けるようにして産卵を行います。マツモなど水中に沈む水草の葉だったり、水面から下に垂れ下がるホテイアオイの根っこだったり。
卵食べられる前に水草を移す
そのまま卵を放置すると高確率で親が食べてしまいます。かろうじて孵化してもやはり親にパクっと食べられたり。
回避方法は簡単。卵が産み付けられた水草を回収して稚魚専用の水槽を用意してやれば、メダカを安定して繁殖させることが可能です。
稚魚が孵化して卵が無くなった水草はまた親の水槽に戻して、卵が付けばまた稚魚水槽に戻して…というローテーションを繰り返せばじゃんじゃん増やせます。後述しますが、この産卵ローテーションに最も適した水草がホテイアオイです。
水草を使わない場合、こういった人工の産卵床も便利です。
こんな人工物でもしっかり産卵してくれます。
メダカの隠れ家になる
意外と厳しいメダカの学校
当たり前に共食いする世界
異なる大きさのメダカを同じ水槽で飼った場合、小さなメダカが大きなメダカに追い掛け回されるという光景をよく見ます。
生まれたてのごく小さなメダカが大きなメダカに追われた結果、パクっと食べられてしまう共食いもメダカ界では日常茶飯事。平気で親が子を食う修羅の世界。
メダカの世界にもあるいじめ
同じような大きさのメダカであっても、どういう理由か追う側追われる側という関係性が出来てしまう場合があり、メダカ界にもいじめがあるという悲しい事実を知ることに。
観察しているとよく分かりますが、メダカのいじめはかなりしつこいです。のび太的なメダカがジャイアン的なメダカの視界に入ればすぐさま体当たり攻撃をされ、見えなくなるまで執拗に追い掛け回されます。結果としてじゅうぶんに餌が食べられなかったりストレスで弱る場合も。これがメダカの学校のリアル…
こういった既製品の隠れ家を用意することで、いじめられっ子の逃げ場をつくることができます。
水草は弱いメダカの逃げ場になる
水草に身を隠す
水草もこれと同じ役目を担うことができ、例えばホテイアオイは水面に浮いた葉から長い根っこが伸びることでそれが隠れ家となります。バコパやロタラで森を作るのもいい。水草を植える小さな鉢やプランターも意外と隠れ家の機能を発揮します。
メダカ同士以外でも、空から鳥に狙われにくくなったりします。
水草を活用して安定したメダカ飼育を
水草はメダカの安定した飼育と繁殖に役立ちます。
また、花が咲いたり、どんどん成長したり、冬には枯れたり、枯れたと思ったら休眠中の形態に変わっていたりと、四季を通して様々な表情を見せてくれます。
メダカの飼育と一緒に水草を育てる楽しみ。あなたもやってみませんか?
なお、市販されている水草のほとんどは簡単に育てられて成長が旺盛な外来種です。増えても決して川や池などに捨てるようなことはせず、あなたが作った飼育環境のみで育てるように心がけましょう。