小学校のプール清掃で採れたヤゴを自宅に持ち帰りトンボに羽化させるヤゴ救出大作戦。
未経験のヤゴ飼育を突然やらされるハードなイベントですが、子どものためにも羽化を成功させなければなりません。しかし何から始めればいいのか?
まずは急いでヤゴの飼育環境を整えましょう。最も避けたい羽化の失敗を回避するためのポイントも解説します。
ヤゴを持ち帰って来た当日にすべきこと
広い容器にヤゴを移しておく
適当な容器に入れて水を換えておく
ヤゴを持って帰ってきた当日はどうすればいいでしょうか?まだ何も準備できてないのに。
子どもは小さなビニール袋やペットボトルにヤゴを入れて持って帰ってくると思うので、そのままだと酸欠で死んでしまいます。ヤゴの糞などで水も汚れているはずです。
入っていた水は一旦捨てて、とりあえず間に合わせの容器に水を溜めてからヤゴを移しましょう。適当なバケツでいいですし、水は水道水を使って構いません。
酸欠に注意する
ヤゴはエラ呼吸する1生き物なので水に溶けた酸素が必要です。
なるべく多くの酸素が取り込めるよう、容器は口の広いものがいいでしょう。深めの皿とかでもいいです。水量が多いほど水が汚れるスピードは遅くなります。
エサを準備する
生きたアカムシがおすすめ
ヤゴを飼育するうえで最も難しいのがエサやり。羽化までずっと継続しなければいけません。
2~3日はエサを食べずとも生きるので、それまでに検討をつけておきましょう。おすすめは釣具屋で買えるアカムシです。くわしくはこちらの記事をご覧ください。
ヤゴを飼育できる環境を作ろう
ヤゴの飼育環境に必要なもの
必ず用意すべきもの&あれば入れておきたいもの
プールで採れたヤゴは止水域に生息するヤゴ。このタイプのヤゴなら飼育環境をつくるのは簡単です。必要なアイテムも多くありません。
まずは標準的な飼育環境の全体像をご覧ください。
ここに配置しているものは以下の通り。
赤字で示したものは必ず用意すべきもの、黒字のものはあったらいいなぐらいのもので無理に用意する必要はありません。
羽化に欠かせないとまり木
羽化の最終ステージとして必須
トンボの羽化においてとまり木は絶対に必要。
ヤゴの飼育自体はあくまで過程であり、目的は羽化させてトンボにすること。そこがゴールです。そのための最終ステージを必ず用意してあげましょう。
羽化は川の壁面であったり葉っぱの裏側であったり、水面から少し離れた高いところで行います。それを再現できるアイテムとしてとまり木は必須です。
太くて滑りにくい木の枝など
止まり木には枯れた木の枝を使うのが最適。水面から10センチ以上の高さが確保できる長さで表面が滑りにくいものを選びましょう。太くて重いほうが安定します。
なければ割り箸も使えますが1本では細すぎるので割らずに使いましょう。数本分をゴムや糸などでまとめて太くするとより安心です。
このとまり木で羽化してくれる可能性は高いのですが、容器を抜け出して思いもよらぬ場所で羽化することもあります。ある日ヤゴの姿が見えなくなったら、周辺の壁などを確認してみてください。
羽化の失敗を防ぐとまり木固定用の石
ヤゴの自重で倒れないよう固定をする
止まり木は倒れないようにしっかり固定することが重要。そのためには大きめの石などで根元をがっちり固定する必要があります。
固定をする目的は羽化の失敗を防止するため。濡れて重くなったヤゴの自重や風により、軽くて不安定な止まり木だと倒れて羽化に失敗します。
羽化の失敗をなるべく避けるために
ヤゴの飼育において最も避けたいのは、途中でヤゴが死ぬことより羽化に失敗すること。
羽化に失敗したまま生き続けるヤゴの姿はまるで異形のモンスターのようで悲惨です。自然界でも当たり前に起こることですがなるべく避けるに越したことはありません。最後の最後で失敗するのもショックです。
羽化を成功させるため、止まり木の固定はしっかり意識して行ってください。
水深が5センチ程度確保できる容器
100均の収納ボックスを流用可能
飼育容器は水深が5センチ程度確保できるものであれば何でも使えます。例えばこの写真で使っている容器はダイソーで売られている100円の収納ボックス。
カブトムシに使った透明のプラケース
カブトムシを育てたときに使った透明のプラケースも使えます。
透明かつ少ない水量で外に置くと緑色の藻やコケが生えやすいので気を付けましょう。
いずれにせよなるべく多くの水量が確保できるほど環境が安定するので、場所が許す限り大きな容器を使うのがおすすめです。
ヤゴが隠れるための石
植木鉢などでも代用できるが無くても問題ない
石はヤゴが隠れる場所として役立ちます。石の下のすき間などに身を隠す習性があるので、そのための石をおいておけば自然とそこに潜り込んでいきます。
陶器製の植木鉢やコップなどでも代用可能。無ければ無いで大きな問題はありませんが、多少でもヤゴのストレスを減らしたり共食いの確率を下げたりする効果が期待できます。
ヤゴが隠れるための水草
必須ではないけどあれば役に立つ
石と同じく水草もヤゴが身を隠すために役立ちます。この写真の水草は金魚藻としても知られるマツモ。
必須ではありませんが、ヤゴの糞などから発生した有害な成分を肥料として吸収し水質を浄化する機能が期待できます。
底に敷く砂利
水質の浄化に役立つ
底に砂利を敷いておけば水質を浄化するためのバクテリアを定着させる効果が期待できます。
とはいえ水質浄化サイクルが成立するのには1ヵ月以上の時間がかかります。ヤゴの場合、水質浄化のサイクルが成立する前に飼育が終了してしまう可能性も高いです。そのため水草と同様に必須ではありませんが、入れておけば飼育環境の見た目もよくなるのであれば入れておきましょう。
底を覆う程度の厚さに敷ければ十分です。
飼育水は水道水を使うのが最適
汲み置きした水道水を用意する
飼育に使う水は汲み置きして塩素を抜いた水道水が最適です。池や川の水を汲んで使った場合、予期しない生物や病原菌の混入があるのでやはり水道水が安心。
ヤゴに対して塩素の影響はそれほど気にする必要はありませんが、汲み置きした水を使うに越したことはありません。ジョウロに汲み置きしておくと足し水や水替えの時に便利です。
水換えは数日おきに
定期的な水換えも必要です。プールから持ち帰った当日やエサやりがうまく軌道にのった場合は、ヤゴがどんどん糞をします。見えませんがおしっこもしています。見た目は透明でも汚れている場合があります。それらはヤゴにとっての毒。
特に水質の浄化サイクルが成立していない飼育初期は、数日おきのこまめな水替えをするようにしましょう。飼育水を半分抜いて汲み置きの水道水を足す程度で問題ありません。
エアポンプのブクブクは必須ではない
プールのような止水域で採れたヤゴにはエアポンプを使ったブクブクは必須ではありません。
用意できるなら使った方が飼育環境が安定しますが、飼育容器の設置場所がコンセントの位置に縛られてしまうので、無理に導入する必要はありません。
飼育容器の設置場所は屋外がおすすめ
屋外の直射日光が当たらない場所に置く
木漏れが差すような場所が理想
飼育容器の設置場所は屋外で木漏れ日が当たるぐらいの場所が理想。
6月ぐらいになると日差しも強く、直射日光が当たり続けるとあっという間に水温が上がってヤゴが死んでしまうからです。今回用意するような少ない水量の飼育環境ならなおさらのこと。
場所の都合上で日差しが避けられないなら、すだれを活用するなどして日陰を作ってあげられるよう工夫してみましょう。
屋外ならエサの自然発生も期待できる
アカムシが湧いてエサやりの苦労が軽減できるかも
ヤゴのエサとして最適なのは生きたアカムシ。
このアカムシはユスリカという小さな虫の幼虫。夕方に外で遊んでいると頭の上に群れるあの虫の幼虫です。ユスリカが水辺の水面付近に卵を産み付けることでアカムシが湧きます。
屋外に飼育容器を置いておけば自然とユスリカが卵を産んでアカムシが発生し、エサやりの苦労を軽減できる可能性があります。同じくボウフラが発生する可能性もありますが、ヤゴが食べて駆除してくれるので心配いりません。
室内への設置はおすすめできない
室内に飼育容器を置くことも可能ですが飼育の難易度は上がります。何らかの虫が侵入してた卵を産んでしまうと、部屋の中に虫が湧くということにもなりかねないので、やはり屋外への設置がおすすめです。
羽化の成功を目標として
ヤゴに限らず昆虫の羽化は神秘的で美しいものです。ぜひ成功させてその感動を子どもと共有してほしい。
ヤゴの飼育はトンボへの羽化という明確なゴールがあるため、成功すれば大きな達成感を感じることが出来る素晴らしい体験です。
ヤゴの羽化を成功させるためには適切な飼育環境の用意が重要。特にとまり木の安定した設置が羽化成功へのカギといえます。この記事を参考に羽化を成功させることを願っています。
- ヤゴのエラは頭部ではなくお尻にあります。直腸内のエラで呼吸をするため、お腹を膨らませたり縮めたりといった動きをしているのが観察できます。 ↩︎