世はメダカブーム。
品種改良された美しいメダカが次々と生み出されています。そうした改良メダカをコレクションのように楽しむこともあれば、屋外でメダカを飼うということ自体も楽しみのひとつになります。
それはいわゆるビオトープと呼ばれるもの。屋外に設置した睡蓮鉢やプラ舟などの水槽でメダカ飼育環境を整え、春夏秋冬、四季を通した飼育を楽しむことができます。
子どものころ、家の玄関などでろ過装置を動かしながら金魚とかグッピーを飼ってたなんて人は多いはず。そしたら屋外で魚を飼うなんてとんでもないと思うかもしれませんが、メダカならカンタンに屋外飼育ができるんです。ろ過装置もヒーターも不要で。
アクアリウム未経験者でも簡単お手軽に始められる屋外のメダカ飼育、あなたも始めてみませんか?
こんな人は屋外のメダカ飼育にピッタリ
あなたはメダカ飼育をやるべき人かも
この記事に辿り着いたということは、多少なりとも屋外のメダカ飼育に興味をお持ちのはず。
でも面倒くさそうだし自分には合わないかもなあと思ってるかもしれません。そんな人にこそ屋外飼育をおすすめしたい。こんな人は屋外でのメダカ飼育にぴったりなんです。
当てはまるものはありましたか?みんなそれなりにズボラなところはあるでしょ?かくいう私もそうです。でも屋外なら放置気味でも大丈夫。
日当たりがいいなら狭いスペースでもいい
メダカの健康を保つためには日光がとても大事。
日当たりのよさが成功の秘訣
そのためには日が当たる場所に水槽を置くことがポイントです。屋外飼育をうまくやるにはとても重要。
夏の強い日差しを考えると午前中は日がさして午後は日陰になる場所が理想なんですが、そんな都合のいい場所はそうそうないと思います。だから半日以上日が差し込む場所であればどこでも。ずっと日が差し込むような南向きの場所でも構いません。
かといって強すぎる日差しは飼育の敵となります。直射日光によって過剰な水温上昇が起こるためです。これは夏の強い日差しはすだれを掛けるなどして対策ができます。
狭い場所でも大丈夫
設置場所の広さは狭くて大丈夫。
睡蓮鉢なら50センチ四方ぐらいのわずかなスペースさえあれば始められます。それは庭じゃなくてもいい。ベランダの一角でもいいし、玄関先でも構いません。水を入れると10キロ以上の重さになるので、不安定な場所に置くのだけは避けましょう。
また、電気で動くポンプやヒーターが必要ないのでコンセントがある位置に縛られません。空いてるスペースならどこにでも水槽を置けます。
屋内飼育に比べると水槽を置く場所の自由度が遥かに高いのが屋外飼育のメリット。
安定すれば水換え不要でエサやりも適当でいい
水草があれば基本は足し水をするだけ
飼育環境が安定してろ過のサイクルが成立すると、ほぼ水換えが不要になります。基本的には蒸発して減った水を足すだけ。
食べ残したエサやメダカの糞が原因で水が汚れていくわけですが、それを処理するろ過バクテリアの増加、そして処理の結果できた養分を吸収する水草によって自然環境に近い水のろ過サイクルが出来上がります。ビオトープには水草が欠かせません。
エサが自然に湧く
飼育してしばらく経過するとエサも自然供給されることに。
それは水槽に飛来した昆虫であったりそれから生まれた幼虫であったり、あるいは水中に発生した植物プランクトンだったり。健康に育てて繁殖を旺盛にするためには栄養価の高い人工のエサをやることも必要ですが、上記の理由からエサやりを数日忘れていたとしても外飼いならほとんど問題ありません。
ブクブクも必要ない
酸素を供給するためのエアレーション、いわゆるブクブクも必要なし。
風によって水面が揺れることで水が空気に触れる面積が広くなり、メダカ飼育に十分な酸素を水に溶け込ませることができます。風は水を動かして対流させる効果もあります。
詳しくはこちらの記事を参考に。
植物を育てるのが好きならより楽しめる
水草を育てるついでにメダカを育ててもいい
ろ過のサイクルに水草は欠かせないということを書きましたが、必要に駆られて仕方なく植えるのではなくそれ自体を楽しむという要素もあります。なんならメダカ飼育はそのオマケという考えがあってもいい。
花も咲くし越冬もできる
水草の選択肢も非常に多く、浮草や水面下に沈むものまでバラエティ豊か。スイレンのようにきれいな花を咲かせる水草もたくさんあります。
冬場は完全に枯れるか休眠状態になって葉を落とすものが多いですが、休眠している植物はまた春になって暖かくなると芽吹いてきます。株を分けて増やすのもかんたん。一度買えばもう買い足さずに育て続けられてお得です。
ビオトープを通して日本の四季を楽しめる
屋外に水槽を置く以上、季節、天候、気温の影響をストレートに受けます。
春は気温上昇に伴って水温がどんどん上がり、メダカの産卵が始まります。繁殖を目指すなら孵化した針子と呼ばれる稚魚のお世話に忙しくなります。日に日に植物も茂ってくる。
夏は水草の生長が最盛期になります。花を咲かせる水草もたくさん。強い日差しによる高水温に気を遣わなければいけない時期でもあります。
秋は春に生まれた稚魚が親と同じぐらいのサイズにまで成長。うまくいけばメダカの数は数倍に増えているでしょう。
冬は完全にオフシーズン。水草は枯れメダカは底でじっとしています。水面が凍ってしまう日があるかもしれませんが、底まで凍らなければ大丈夫。
このようにビオトープは日本の四季を反映する鏡のようなもの。暑い時期、寒い時期、それぞれ嫌いな人もいると思いますが、四季をより深く身近に感じることができるのも屋外飼育の醍醐味といえます。
屋外のメダカ飼育に必要なアイテム
さて、あなたのお宅では水槽を設置できる場所が確保できそうでしょうか?そしたら屋外飼育に必要なアイテムを確認していきましょう。おおよそこんなものが必要となります。
こだわらなければまとめて2000円程度から始めることができます。ろ過装置もヒーターもいらないからランニングコストもほとんど不要。定期的に買い足すのはエサぐらい。あとはほんのわずかな水道代だけ。
水量と表面積が確保できる容器
できるだけ水量が多い容器を
水を入れる容器は設置場所がゆるす範囲でなるべく容量の大きな物を選びましょう。水量が多いほうが水質が安定するからです。
そしてすり鉢状のような開口部が広いものを選ぶと水面の表面積が広がり、よりたくさんの酸素が取り入れられます。
そういった意味では、睡蓮鉢の形状は理にかなっています。
大容量の水が貯められる左官用のプラ舟もメダカ飼育の定番です。
Amazonのレビューを見てもらうと分かりますが、建築資材を混ぜる容器という本来の目的ではなく今やメダカ用として購入している人がほとんどです。
どの容器を水槽にするにしても15センチ程度の深さが確保できれば十分。逆にあまり深い容器だと水の対流が起こりにくいのでおすすめできません。
底土を敷くと環境を安定させやすい
初心者は底土を敷いたほうがいい
最近はYouTubeなどにメダカ飼育のプロ的な人が動画をたくさんあげています。
品種改良目的で効率よく繁殖をさせるような人はコンテナの容器と水だけのシンプルな環境で育てていたりしますが、初心者がマネをしてもあんまりうまくいかないと思います。やはり水草、そして底土を敷いたほうが環境が安定します。
定番は赤玉土
底土とは文字通り水槽の底に敷く土。メダカの屋外飼育には園芸用の赤玉土(中粒)を使うのが大定番。
底土を使う理由は水をろ過するバクテリアの増殖を促せるから。特に赤玉土のような小さな穴が無数に空いた多孔質の素材は、水に触れる面積が広くなるからバクテリアをより多く安定して増やすことができます。
ホームセンターの園芸コーナーで20リットル200~300円で買えるリーズナブルさも定番になっている理由。
長く続けるなら大磯砂を使う選択肢も
ただし1年もたてば汚れなどで多孔質が失われるため、ずっと使い続けることはできません。粒がつぶれやすいため清掃するのが難しいというデメリットもあります。
そういった理由から、長くビオトープを続けるのであれば大磯砂(南国砂)を底土として使うのがおすすめです。
屋外で育てられる水草は水質浄化に役立つ
メダカにっての毒を養分として吸収できる
先に書きましたが、水草を入れることでさらに飼育環境が安定します。濾過バクテリアによって作られた養分はメダカにとって多少の毒性があるのですが、それを水草が吸収するからです。
また、水草は日よけになったり、酸素を供給してくれたり、メダカの隠れ家になったり、卵を産み付ける産卵床になったり、屋外飼育にとって役立つことばかり。ビオトープ必須アイテムといえます。
まずはこの2種類の水草から
水草の選択肢はたくさんありますが、初心者におすすめなのはこの2種。
まずはメダカ屋外飼育に必須な水草といって差し支えないホテイアオイ。
浮かべておくだけでぐんぐん栄養を吸収して爆増、伸びた根っこはメダカの産卵床として最も使いやすいもののひとつ。初心者にはマストな水草です。夏場には稀に薄紫の妖しげな花を咲かせます。
もう一種はマツモ。
松葉を思わせる細くて涼し気な葉が特徴の水中を漂うタイプの水草。根っこがないのでそのまま放り込んでおくだけ。こちらも栄養分の吸収が旺盛でどんどん増え、水質の浄化に役立ちます。
いずれもホームセンターで200円ぐらいあれば買えます。あっという間に爆増するので1株あれば買い足す必要がありません。
初めてのエサはよく浮くタイプがおすすめ
浮上性の高いエサは回収できる
メダカが食べきれなかったエサはやがて底に沈み、そのままだと水を汚す原因となってしまいます。特に初心者はエサを過剰にやりがち。
だから初心者は長時間浮くタイプのエサがおすすめ。メダカが食べきれてないと判断したら、水面を網ですくえば簡単に回収できるから。
よく浮く、そして長く浮くという観点でいえばこのエサが一番です。
目的に合わせていろいろなエサを試そう
メダカの餌は迷うほど沢山の種類があるので、飼育に慣れたらいろんなエサをためしてみてください。赤いメダカの色を更に赤くする「色揚げ」の効果を持ったエサなんてのもあります。
メダカが活発な夏はタンパク質も脂肪分も多いハイカロリーなエサを、活性が落ちてきたら消化のいい細かくて低たんぱくなエサをやるなどの使い分けも。ちゃんとしたエサなら成分が書いてあるはず。
お好きなメダカを少ない数から始めよう
肝心のメダカですが、これは財布と相談してあなたが気に入ったものを買ってください。飼いたいものを買うのが一番だと思うから。
安くて育てやすいのはこのメダカ3種
でもなるべく育てやすい、強いメダカを買えばなるべく死なせる確率を減らすことができます。そういった意味では最初はこの3種から選ぶのがおすすめ。
いずれも基本的なメダカの形で、雑に言えばクロメダカの色違いだと思ってください。色が違うだけで買い方も特性も同じ。混ぜて繁殖もできます。メダカの中でもリーズナブルで安く手に入るメダカといえます。
どちらかというと品種改良が進んだメダカほど弱い傾向があるので、その点も考慮して選んでください。上で挙げた3種は原種に近いメダカなので強いです。
最初は2リットルにつき1匹を目安に
いずれにせよ最初は少なめの数で飼い始めるといいでしょう。水1リットルにつき1匹というよく知られた基準がありますが、もっと余裕を持って2リットルにつき1匹ぐらから始めてみてはいかがでしょうか。
慣れればその水量で飼えるメダカの上限が分かってくるはずです。
エビとタニシの相性は抜群
メダカ以外にもヌマエビやヒメタニシなどを一緒に飼うと、食べ残しのエサを処理してくれて水質の維持に役立ちます。
いずれも放置で勝手に繁殖してくれるので、最初に数匹用意すれば十分。
基本的な屋外飼育の流れ
必要な道具を網羅したところで、屋外飼育の基本的な流れを1年の時系列でみていきましょう。起点は桜が散ったあとぐらいの時期からを想定しています。
水槽の立ち上げはゴールデンウィークが最適
5月以降は天候が安定するから生存率があがる
「なんか自分にもできそうだしメダカを外で飼おう!」
そう思い立って始めるベストな時期はゴールデンウィーク辺りです。
どんどん気温が上がっていく時期で日ごとの気温差も少なくなるため、飼い始めたばかりの不安定な環境にいるメダカの生存率が上がります。また、ホームセンターなどでもメダカ関連アイテムの取り扱いが豊富になるので揃えやすくなる時期。
念のためカルキ抜きを
お好みの水槽に赤玉土などの底土を敷いたら9分目まで水道水を注いで丸一日ほど放置。そうすることで塩素が抜けます。いわゆるカルキ抜き。太陽光が当たれば当たるほど早く抜けます。特にカルキ抜きの薬剤は必要ありません。
実際のところ屋外なら塩素が抜けるのも早いので、直接水道水にメダカを入れても問題なかったりします。これはお住まいの地域の水道によるところもあるので自己責任でお試しください。
ろ過バクテリアを意識しよう
少ない数であればその直後からメダカを投入してもいいでしょう。
でもできるなら一週間ぐらい空けたほうが安心。なかなかろ過バクテリアが増えず水が汚れる場合もあるので、この時期は週一回ぐらいのペースで1/3ぐらいの水換えをしておいた方が生存率が上がります。
水草は買ってきたそのままで
買ってきた水草は浮草なら浮かべるだけ、鉢に植わってるものならそのまま沈めるだけ、水中を漂うタイプなら放り込んでおくだけ。5月以降ならすぐに伸びて増殖するはずです。
真夏と真冬は安定した環境を整えにくいので、その時期にビオトープを立ち上げるのは避けましょう。
繁殖をさせるなら稚魚専用水槽を
卵と稚魚は親と隔離する
5月も後半になると、成熟したメダカでオスメスがいればどんどん卵を産みます。色や形が違うメダカ同士でもちゃんと卵ができます。ホテイアオイの根っこを見たらびっしり卵だらけだったり。
この卵は親と同じ水槽だと食べられてしまいます。運良く孵化したとしてもやはり親にパクっと食べられます。だからしっかり繁殖させるためには稚魚専用の孵化&飼育水槽を用意する必要があります。
夏場はすだれなどで高温対策
高温に強いけど対策は必要
メダカはかなり高水温に強く、40度近いお湯のような水の中でも生きていたりします。とはいえダメージを受けるので夏場の直射日光は避ける必要があります。
ずっと日が当たる南向きの設置場所なら、夏場はすだれをかけるなどして遮光しておきましょう。7月から8月は特に気をつける必要があります。
夏の水草はどんどん間引け
水草の生長が旺盛になるので放っておくとすぐ水面を覆ってしまいます。日よけとしてはいいのですが、水面の表面積が減って酸素が取り込まれにくくなる悪影響も。適当なところで間引きが必要です。
冬までにメダカを健康体に
秋のうちにメダカを太らせよう
うまくいけば、秋には春に生まれた稚魚が親と近いサイズになっているはず。産卵を始めている個体もあるでしょう。
厳しい夏の日差しが和らいだ初秋は、一年のうちで最もビオトープが賑やかになる季節です。エサも旺盛に食べるので飼育も楽しい時期。
とはいえ一日一日と気温が下がり冬の気配も見えてくる時期です。来たるべく厳しい冬に備えて、なるべくメダカを太らせておく必要があります。やせ細った個体は冬を超えられないどころか、12月を迎えたぐらいの時期からバタバタ死んでいくことも。
元気のなくなった水草は放置で問題なし
水草も日に日に元気がなくなって一見枯れたように見えますが、ほとんどの水草は休眠状態になっていくだけで生きています。よく見ると普段とは少し違う小さな葉をつけているのみになっていたり紅葉しているように見えたり。春になって暖かくなればまた芽吹いてきますので、そのまま水中に放置で構いません。腐ってボロボロになっているのなら除去しましょう。
水面に浮くタイプの浮草は冬を超えられないものが多い傾向です。
真冬はメダカを構ってはいけない
冬は放置が大事
12月も中盤になると氷点下になる日もあり、メダカの活性は一層低くなります。沈んだまま水底や物陰にかくれて姿が見えなくなりますが、むしろそれは上手く越冬できている証拠といえます。
基本的にエサをやる必要はないので何も世話をする必要はありません。むしろ触らず放置することがこの時期大事なこと。
エサやりは慎重に
日差しがあり暖かい日などは水面まで浮いてくることもありますので、そのときはお昼過ぎぐらいを限度に少々のエサをあげても問題ありません。夕方近くにエサをやると、その後どんどん気温が下がって消化不良を起こす可能性があるので避けるべきです。
水面が凍っても大丈夫
水面が凍る日もありますが、よっぽど厚い氷でない限りメダカは底に移動して生きています。おおよそ4℃の水が最も密度の高い状態であり、この温度に近い水が底にたまるからです。
春先の孵化は難しい
春の気配を感じる3月ぐらいになるとまたメダカが活動を開始します。早ければ産卵する個体まで出てきますが、まだ水温が低いこの時期は孵化させにくいので放置でいいと思います。4月でもなかなか孵化は困難で、やはり本番はゴールデンウィークあたりから。
年一回のリセットがおすすめ
春先はメダカ飼育環境のリセットに最適な時期。1年間水換えをしていなかったとしてもこの時期にやっておいたほうがいいでしょう。
底土の入れ替え、水草の株分けや植え替え、水槽の汚れ落としなど、一年で一番作業が多い時期かもしれません。
まずは手軽に始めてみよう
適当な50センチ四方のスペースさえあればかんたんかつリーズナブルに始められるのがメダカの屋外飼育です。
今まで魚の飼育なんてやったことないから不安だなという人にほどおすすめ。私自身もそれまで魚を飼った経験は無いに等しかったのですが、やってみればなんとかなるもんでした。もちろん上手くいかず死なせてしまうこともあります。手軽に始められるのは間違いないけど、同時に命を預かる責任は必要だと思います。
メダカの屋外飼育はきっとあなたの生活に刺激と潤いを与えてくれるはず。まずは手軽に始めてみませんか?